ページ

2016年12月31日土曜日

『現代思想』に「トランプと人種差別」というエッセイを書きました

『現代思想』2017年1月号に「トランプと人種差別」というエッセイを書きました。
http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=3005
トランプ当選についての詳細な分析は政治学者に任せて、僕はこの事態に関連して読める文学作品について考えてみました。取り上げた作品はこんな感じです。

マイケル・シェイボン『ユダヤ警官同盟』(新潮文庫)
フィリップ・ロス『プロット・アゲンスト・アメリカ』(集英社)
ロベルト・ボラーニョ『アメリカ大陸のナチ文学』(白水社)
ジュノ・ディアス『こうしてお前は彼女にフラれる』(新潮社)

ラティーノ/ラティーナと呼ばれるラテン系住民の増加がアメリカ社会や文化をどう変えたかに興味があります。あと数十年経ったら、我々が抱いてアメリカ像は根本的に変更しなくてはならなくなりそうです。

2016年12月30日金曜日

1月20日に志賀直哉について話します

2016年1月20日に志賀直哉に国際文化会館で志賀直哉について話します。
https://www.i-house.or.jp/programs/nichibunihj20170120/
日本文学者の郭南燕さんが多言語という立場からみた志賀直哉という講演をされるのですが、そのコメンテーターとしてお話をします。
英語・中国語・フランス語と日本語の間にある言語としての現代日本語を考えた志賀直哉、というのは非常に刺激的な視点ではないでしょうか。日本文学の新しいあり方について考えることかできれば嬉しいです。

2016年12月21日水曜日

『英語教育』11月号にミュリエル・スパークについて書きました

『英語教育』2016年11月号にミュリエル・スパーク『仕上げ学校』について書きました。
http://www.taishukan.co.jp/book/b251694.html
『あなたの自伝、お書きします』を読んでスパークの面白さに開眼しました。底意地が悪く、どんな人でも面白がる主人公が最高です。木村政則さんの翻訳も最高でした。自分の名でスパーク熱が盛り上がってきて、次はFinishing Schoolを読んでしまいました。これも面白かった。
ごく小さな私立学校をやっているカップルと生徒たちの話なのですが、恋や嫉妬など様々な主題が入り交じり、スパーク特有のとぼけた文体で綴られていきます。素晴らしい作品です。

2016年12月20日火曜日

『本の雑誌』11月号の新刊めったくたガイド書きました

『本の雑誌』2016年11月号の新刊めったくたガイド書きました。
http://www.webdoku.jp/
取り上げた本は以下の通りです。

ペーター・シュタム『誰もいないホテルで』(松永美穂訳、新潮社)
戌井昭人『酔狂市街戦』(扶桑社)
渡辺京二『私のロシア文学』(文春学藝ライブラリ)

スイス文学って面白いな、とシュタムの本を読んで思いました。常に森と人との関係が描かれる、という点では辺境文学と言っていいでしょう。ドイツ語圏の現代文学をもっと読んでみたくなりました。
戌井さんの作品はどれも大好きなのですが、これもものすごく染みました。動物とふれあう人の澄んだ目に惹かれるところなんていいなあ。渡辺京二のプーシキン『オネーギン』読解は素晴らしかったです。日本の知識人がはずっと頭でっかちでしかなかった、という指摘は本当にそのとおりです。

2016年12月19日月曜日

『英語教育』10月号に町田康『パンク侍』英語版について書きました

『英語教育』10月号に町田康『パンク侍、斬られて候』の英語版について書きました。
http://www.taishukan.co.jp/book/b245451.html
町田康さんの『宇治拾遺物語』や『義経記』の現代語訳はとても高い評価を得ています。町田さんの小説の醍醐味はそのままに、昔の人々の心の中にまで入っていけるものになっているからです。
では町田さんの小説の英語訳はどうなっているのでしょう。果たして日本語で読んだときの面白さは英語でも変わらないのでしょうか。そして英語になりやすいものだけが世界文学たりえるのでしょうか。

2016年12月18日日曜日

『本の雑誌』10月号の新刊めったくたガイド書きました

『本の雑誌』10月号の新刊めったくたガイド書きました。
http://www.webdoku.jp/
取り上げた本は以下のとおりです。

ミュリエル・スパーク『あなたの自伝、お書きします』木村政則訳、河出書房新社。
町田康『ギケイキ』河出書房新社。
池内紀『カント先生の散歩』潮文庫。

スパークは底意地の悪い感じがたまりません。嫌な人を見ると主人公が面白がってどんどんと深みにはまっていきます。木村さんの訳も最高です。スパーク、あまりにも好きになりすぎて原書でも読み始めてしまいました。
『ギケイキ』は『義経記』の翻訳と創作の中間のような作品です。『宇治拾遺物語』の翻訳で見せてくれた自由闊達さはそのままに、より町田さんの気持ちが入った文章になっています。特に弁慶が孤独に苦しむところはとても印象深いです。
池内紀さんの作品は、カントの思想というより人柄に迫っていきます。こういう、優しい表現でジワーッと心の中に入ってくるような文章が書ける大人になりたいな、と常々思ってきました。今回改めて池内さんの素晴らしさを知りました。

2016年12月8日木曜日

12月24日に中村和恵さんとイベントをします

2016年12月24日に中村和恵さんや平凡社ライブラリー編集長Tさんと、下北沢のB&Bでイベントをします。
http://bookandbeer.com/event/20161224_trumpet/
時間は午後3時スタート、予約が必要です。
タイトルは「ほんとうの伝えかた:LGBTと世界文学をめぐって」で、中村さんが訳したジャッキー・ケイ『トランペット』(岩波書店)の刊行記念イベントになっています。この本に関してだけではなく、平凡社ライブラリーのLGBT関連アンソロジーその他についても話す予定です。
クリスマスイヴの午後に、愛や性について考えるのもいいのではないでしょうか。ご興味があれば。

筒井康隆さんのインタビューが掲載されました

2017年1月号の『文學界』に、筒井康隆さんのインタビューが掲載されました。
http://www.bunshun.co.jp/mag/bungakukai/
僕が聞き手を務めさせていただいております。これは昨年10月に東京大学本郷キャンパスで行ったイベントの記録です。お忙しいところ貴重な時間を割いてくださった筒井さん、見に来てくださった観客のみなさん、素晴らしい原稿にまとめてくださった『文學界』のスタッフ、そしてこうした機会を与えてくださった飯田橋文学会のみなさん、どうもありがとうございました。あらためて、深く感謝しております。

2016年12月7日水曜日

北海道新聞でトランプのアメリカがわかる3冊を選びました

少し前になってしまいましたが、11月25日付けの北海道新聞で、トランプのアメリカがわかる3冊を選びました。
http://dd.hokkaido-np.co.jp/
とはいえ、具体的な分析は他の方に任せて、僕は移民の女性を扱った3冊にしました。具体的には、

・チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ『アメリカーナ』くぼたのぞみ訳、河出
書房新社、2016年。
・ノヴァイオレット・ブラワヨ『新しい名前』谷崎由依訳、早川書房、2016年。
・ジュリー・オオツカ『屋根裏の仏さま』岩本正恵・小竹由美子訳、新潮社、
2016年。

社会の矛盾は一番弱いところに出ると思います。この3冊を読むと、新しい国に移ってきた人々がどんな事を感じるか、どういうことを経験するのかが、ものすごくリアルにわかります。そして読書を通じて、いつのまにか読者である我々の想像力の範囲も広がっていくのです。こうした文学の次元って、地味だけどとても大切ですよね。

12月10日(土)に東京外国語大学でシンポジウムをします

直前のお知らせになってしまいましたが、2016年12月10日(土)に東京外国語大学でシンポジウムをします。タイトルは『和田忠彦教授退任記念シンポジウム 遊戯のはじまり』です。
スタートは午後1時からで、予約は不要です。
僕はリディア・デイウィスやジュノ・ディアスについて語りながら、翻訳と文学の関係について考えてみようと思っています。ご興味があれば。
https://tufstoday.com/articles/161206-3/