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2016年8月13日土曜日

『本の雑誌』9月号の新刊めったくたガイド書きました

『本の雑誌』2016年9月号の新刊めったくたガイド書きました。
http://www.webdoku.jp/honshi/
取り上げた本は以下のとおりです。

リディア・デイヴィス『分解する』岸本佐知子訳、作品社。
くぼたのぞみ『鏡のなかのボードレール』共和国。
ミラン・クンデラ『小説の技法』西永良成訳、岩波文庫。

デイヴィスの作品は以前から本当に大好きです。今回岸本さんの訳で読み直してみて、女性として生きることの困難さをデイヴィスが扱っていることに遅まきながら気づきました。深い。
くぼたさんの本はボードレールから有色の女性の人生の話になり、クッツェー論につながっていくという壮大なものです。たった200ページほどでこれだけを書いたのはすごい。個人的には、日本の男性読者たちが女性として世界を見ることができるのが、現在文学を読むことの大きな意義の一つとなる、という一節にシビれました。地に足のついた、愛の籠もったフェミニズム、という感じですよね。
クンデラの本を読むのは久し振りなんですけど、やっぱりいいですね。小説とは、正しさが一つしかないと考える人々に対抗するためにある、という言葉は現代的な意義が大いにあると思います。クンデラって、未来の作家なのかもしれません。おすすめです。