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2016年8月20日土曜日

『本の雑誌』7月号の新刊めったくたガイド書きました

『本の雑誌』2016年7月号の新刊めったくたガイドを書きました。
http://www.webdoku.jp/
取り上げた作品は以下のとおりです。

オルハン・パムク『僕の違和感』宮下遼訳、早川書房。
リービ英雄『模範郷』集英社。
嵐山光三郎『漂流老人・きだみのる』小学館。

パムクの『僕の違和感』は、呼び売り商人である主人公の目を通して近代化していくイスタンブールを体験できる優れた作品です。家族で『大草原の小さな家』を見たり、『ダラス』を見たりと、トルコってなんとなく日本っぽいですよね。若き俊英の宮下さんは、本当にいい仕事を凄まじい速さでしています。
リービ英雄の『模範郷』は、子供時代を過ごした台湾に、長い時を経て帰郷する、という作品です。小説とノンフィクションの間くらいかな。中国と日本とアメリカという三つの軸で思考することがどれだけ刺激的かがよくわかります。
嵐山光三郎のきだみのる論ですが、本当に魅力的な作品ですよね。読んでいると、今よりもっと自由だったころの日本がかつてあった、という気がします。もちろんそれは錯覚で、破天荒な思想家であるきだが作り出した一瞬の幻想空間だったわけですが。
日本を内と外から同時に見る視点が大切だ、と思い知りました。