ページ

2016年8月16日火曜日

『本の雑誌』8月号の新刊めったくたガイド書きました

『本の雑誌』2016年8月号の新刊めったくたガイド書きました。
http://www.webdoku.jp/
取り上げた作品は以下のとおりです。

キム・ヨンス『ワンダーボーイ』きむ・ふな訳、クオン。
鈴木大拙『禅堂生活』横川顕正訳、岩波文庫。
伊藤比呂美『ラニーニャ』岩波現代文庫。

クオンから出た待望の現代韓国文学最新作はキム・ヨンスのこの本です。交通事故の衝撃で人の心の中がわかるようになった少年が、80年代の韓国を駆け抜けます。戦争と学生運動と消費社会が並列するこの作品は、まるで日本の戦後を凝縮して見せてくれているようです。日本について考える上でも、現代韓国文学は大きな手がかりを与えてくれると思います。
鈴木大拙がもとは英語で書いた『禅堂生活』には、経済大国や軍事大国ではない、もう一つの日本が描かれています。それは慈悲の心に基づいた国です。そうした国になるには、我々一人一人の内面の変化が必要となってくるでしょう。
伊藤比呂美の『ラニーニャ』を読んでいると、日本語とカリフォルニアの光が出会ったことでこんなに新鮮な言葉が生まれるんだ、と感銘を受けます。南北アメリカ文学が、ヨーロッパの言語とアメリカの自然との出会いによって生まれたように。ここには新しい形の移民文学があります。