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2016年8月31日水曜日

『英語で読む村上春樹』5月号にジュンパ・ラヒリ『停電の夜に』について書きました

 『英語で読む村上春樹』2016年5月号にジュンパ・ラヒリの『停電の夜に』について書きました。
https://cgi2.nhk.or.jp/gogaku/english/yomu/
ジュンパ・ラヒリの『停電の夜に』は非常にたくさん売れた作品です。読んでみると、恋愛結婚をしたカップルがすぐに別れたり、お見合い結婚のカップルが長く添い遂げたりと、通常の現代アメリカ文学ではおよそ考えられないテーマ設定になっています。もちろん彼女のインドという背景が大きく関係しているのでしょう。そして彼女の作品のこうした側面は、日本人の読者にとっても遠くないと思います。

2016年8月28日日曜日

『英語教育』6月号にフィリップ・ロス『プロット・アゲインスト・アメリカ』について書きました

 『英語教育』2016年6月号にフィリップ・ロスの『プロット・アゲインスト・アメリカ』について書きました。
http://www.taishukan.co.jp/book/b227490.html
ナチスのユダヤ人虐殺は遠い昔のこと、というイメージがあるかもしれませんが、この作品では人種差別主義者の大統領が当選したあと、アメリカがファシズム国家に変わり、ついにユダヤ人が殺され始めてしまいます。フィリップ・ロスの社会批判はいつも通りとても深いですね。作品としてもとても充実しています。柴田元幸先生による翻訳も素晴らしいクオリティです。もっとみんなロスを読もう。

2016年8月27日土曜日

『英語で読む村上春樹』6月号にアリス・マンローについて書きました

『英語で読む村上春樹』2016年6月号にアリス・マンロー『小説のように』について書きました。
https://cgi2.nhk.or.jp/gogaku/english/yomu/
ノーベル文学賞受賞作家というと、なんだか難しい感じがします。でもマンローはまったくそんなことありません。カナダの小さな町に住みながら、普通の人々の思いに寄り添うマンローは、現代文学に親しみのない方々にも楽しんでもらえる作品を書いていると思います。


2016年8月26日金曜日

(再掲)8月28日に下北沢B&Bで藤井光さんと対談します

明後日8月28日に下北沢B&Bで藤井光さんと対談します。
午後3時からで、参加には予約が必要です。
http://bookandbeer.com/event/20160828a_bt/
先日、藤井さんは中央公論新社から日本語単著としては初の『ターミナルから荒れ地へ——アメリカなき時代のアメリカ文学』を出されました。今回はこの本を中心に、藤井さんの幅広いお仕事とも絡めていろいろと訊いていきたいと思います。御興味があれば。

『本の雑誌』6月号の新刊めったくたガイド書きました

『本の雑誌』2016年6月号の新刊めったくたガイドを書きました。
http://www.webdoku.jp/
取り上げた作品は以下のとおりです。

ジュリー・オオツカ『屋根裏の仏さま』岩本正恵・小竹由美子訳、新潮社。
ル・クレジオ『ラガ』管啓次郎訳、岩波書店。
町田康『リフォームの爆発』幻冬舎。

オオツカの『屋根裏の仏さま』は、戦前アメリカに渡った日本人の女性たちがどんなに辛い人生をおくったかを綴った作品です。特徴的なのは、特定の個人に焦点を当てるのではなく、集団としての彼女たちという視点から書かれていることです。一人になったり複数になったりしながら、小説と歴史の間の語りが続いていきます。
訳者の岩本正恵さんは数年前に亡くなりました。とても素晴らしい人格で、実力も高かった方で、翻訳界にとっては大きな損失でした。僕もずいぶん親切にしていただきました。この作品では小竹由美子さんが引き継ぐ形で作品を完成させていらっしゃいます。ありがたいことです。
ル・クレジオの作品は最近とてもいいですね。バヌアツを舞台に、南太平洋で行われた奴隷制などの歴史が語られていきます。これはエッセイと歴史、小説の間のような作品ですね。ノーベル賞受賞後も進化し続けるなんて凄すぎます。
町田康さんの『リフォームの爆発』も面白かったです。小説になり、建築エッセイになりと、ジャンルを問わない文章は常に魅力的です。今回は現実から浮き上がった「真理」が文学を殺してしまう、という町田さんの主張について書きました。こういうことをおっしゃっているのを見ると、人としても書き手としても本当に信頼できる方だなあ、と思います。

2016年8月25日木曜日

『英語教育』7月号にバンヴィル『海に帰る日』について書きました

『英語教育』2016年7月号にジョン・バンヴィルの『海に帰る日』について書きました。
http://www.taishukan.co.jp/book/b238607.html
現代アイルランドを代表する作家、バンヴィルの『海に帰る日』は興味深い細部に満ちた作品です。妻がガンで弱っていく仮定と少年の日の恋が交錯しながら、その両方ともそぐわないエピソードや感覚がたくさん挿入されていきます。小説を読む喜びとは何か、現代において小説を書くとはどういうことかについて考えさせられる、とても優れた作品になっていると思います。

2016年8月20日土曜日

『本の雑誌』7月号の新刊めったくたガイド書きました

『本の雑誌』2016年7月号の新刊めったくたガイドを書きました。
http://www.webdoku.jp/
取り上げた作品は以下のとおりです。

オルハン・パムク『僕の違和感』宮下遼訳、早川書房。
リービ英雄『模範郷』集英社。
嵐山光三郎『漂流老人・きだみのる』小学館。

パムクの『僕の違和感』は、呼び売り商人である主人公の目を通して近代化していくイスタンブールを体験できる優れた作品です。家族で『大草原の小さな家』を見たり、『ダラス』を見たりと、トルコってなんとなく日本っぽいですよね。若き俊英の宮下さんは、本当にいい仕事を凄まじい速さでしています。
リービ英雄の『模範郷』は、子供時代を過ごした台湾に、長い時を経て帰郷する、という作品です。小説とノンフィクションの間くらいかな。中国と日本とアメリカという三つの軸で思考することがどれだけ刺激的かがよくわかります。
嵐山光三郎のきだみのる論ですが、本当に魅力的な作品ですよね。読んでいると、今よりもっと自由だったころの日本がかつてあった、という気がします。もちろんそれは錯覚で、破天荒な思想家であるきだが作り出した一瞬の幻想空間だったわけですが。
日本を内と外から同時に見る視点が大切だ、と思い知りました。

2016年8月19日金曜日

『週刊新潮』に中村文則『私の消滅』について書きました

 『週刊新潮』2016年7月14日号に中村文則の『私の消滅』について書きました。
http://www.shinchosha.co.jp/shukanshincho/backnumber/20160707/
中村文則は本当に優れた作家だと思います。文章もいいですし、男性の暴力や個人の自由意志の問題など、最先端の主題を扱っています。海外でも高く評価されているのは納得です。

本文はここで読めます。
http://www.bookbang.jp/review/article/515211

2016年8月18日木曜日

『英語教育』8月号に ウエルベック『地図と領土』について書きました

『英語教育』の8月号にミシェル・ ウエルベック『地図と領土』(ちくま文庫)について書きました。
http://www.taishukan.co.jp/book/b240509.html
フランスがイスラム教徒によって統治される日を描く『服従』で話題を集めたウエルベックですが、実際に読んでみると、現代に生きることの困難さと正面から取り組んでいる、非常に優れた作家です。ゴンクール賞を獲得した『地図と領土』も名作です。本稿では労働することの喜びに焦点を当てて書いてみました。

2016年8月17日水曜日

『基礎英語1』2016年8月号にエッセイを書きました

『基礎英語1』2016年8月号にエッセイを書きました。
https://www2.nhk.or.jp/gogaku/english/basic1/
小学生時代の英語との出会いや、そのあとどういうふうに勉強を進めたのかについて書いてみました。中学一年生向けに文章を書く、というのは自分にとって、とても楽しい挑戦でした。ご興味があれば。

2016年8月16日火曜日

『本の雑誌』8月号の新刊めったくたガイド書きました

『本の雑誌』2016年8月号の新刊めったくたガイド書きました。
http://www.webdoku.jp/
取り上げた作品は以下のとおりです。

キム・ヨンス『ワンダーボーイ』きむ・ふな訳、クオン。
鈴木大拙『禅堂生活』横川顕正訳、岩波文庫。
伊藤比呂美『ラニーニャ』岩波現代文庫。

クオンから出た待望の現代韓国文学最新作はキム・ヨンスのこの本です。交通事故の衝撃で人の心の中がわかるようになった少年が、80年代の韓国を駆け抜けます。戦争と学生運動と消費社会が並列するこの作品は、まるで日本の戦後を凝縮して見せてくれているようです。日本について考える上でも、現代韓国文学は大きな手がかりを与えてくれると思います。
鈴木大拙がもとは英語で書いた『禅堂生活』には、経済大国や軍事大国ではない、もう一つの日本が描かれています。それは慈悲の心に基づいた国です。そうした国になるには、我々一人一人の内面の変化が必要となってくるでしょう。
伊藤比呂美の『ラニーニャ』を読んでいると、日本語とカリフォルニアの光が出会ったことでこんなに新鮮な言葉が生まれるんだ、と感銘を受けます。南北アメリカ文学が、ヨーロッパの言語とアメリカの自然との出会いによって生まれたように。ここには新しい形の移民文学があります。

2016年8月15日月曜日

『早稲田文学』に夏目漱石『坊っちゃん』について書きました

『早稲田文学』2016年夏号に夏目漱石の『坊っちゃん』について書きました。
http://www.bungaku.net/wasebun/magazine/index.html#2016sum
タイトルは「友達の作り方」です。この原稿のために『坊っちゃん』を読み返しましたが、やっぱり最高ですね。夏目漱石って本当に素晴らしいです。

2016年8月14日日曜日

『英語教育』9月号にハン・ガン『菜食主義者』について書きました

『英語教育』2016年9月号にハン・ガン『菜食主義者』(クオン)について書きました。
http://www.taishukan.co.jp/book/b243629.html
世界的にも権威あるブッカー国際賞を今年受賞したハン・ガンの『菜食主義者』。
http://shop.chekccori.tokyo/products/detail/58
クオンから刊行されている日本語版を読んでもわかるように、食べることを拒否する一人の女性の人生について強烈なイメージを駆使しながら繊細な文章で描いています。そのマッチョ批判は、韓国社会だけでなく広く現代世界を覆う悪を告発しているようにも思えます。隣国でこんなにも優れた文学が現在書かれていることに驚きました。

2016年8月13日土曜日

『本の雑誌』9月号の新刊めったくたガイド書きました

『本の雑誌』2016年9月号の新刊めったくたガイド書きました。
http://www.webdoku.jp/honshi/
取り上げた本は以下のとおりです。

リディア・デイヴィス『分解する』岸本佐知子訳、作品社。
くぼたのぞみ『鏡のなかのボードレール』共和国。
ミラン・クンデラ『小説の技法』西永良成訳、岩波文庫。

デイヴィスの作品は以前から本当に大好きです。今回岸本さんの訳で読み直してみて、女性として生きることの困難さをデイヴィスが扱っていることに遅まきながら気づきました。深い。
くぼたさんの本はボードレールから有色の女性の人生の話になり、クッツェー論につながっていくという壮大なものです。たった200ページほどでこれだけを書いたのはすごい。個人的には、日本の男性読者たちが女性として世界を見ることができるのが、現在文学を読むことの大きな意義の一つとなる、という一節にシビれました。地に足のついた、愛の籠もったフェミニズム、という感じですよね。
クンデラの本を読むのは久し振りなんですけど、やっぱりいいですね。小説とは、正しさが一つしかないと考える人々に対抗するためにある、という言葉は現代的な意義が大いにあると思います。クンデラって、未来の作家なのかもしれません。おすすめです。

2016年8月12日金曜日

『英語で読む村上春樹』にインタビューが収録されました

『英語で読む村上春樹』2016年9月号(NHK出版)にインタビューが収録されました。
https://cgi2.nhk.or.jp/gogaku/english/yomu/
村上春樹がアメリカ文学などの影響を受けながら、やがて世界に与えるようになった状況について語りました。ラジオ放送時よりだいぶ長めに収録されています。ご興味があれば。

2016年8月11日木曜日

『考える人』で町田康さんと対談しました

『考える人』2016年夏号で町田康さんと対談しました。
タイトルは「『吾輩は猫である』を読む」で、そのとおり夏目漱石の『猫』について語り合っています。
http://kangaeruhito.jp/articles/-/1755
いろいろと準備して対談に臨んだのですが、町田さんがあまりにも天才すぎて、すっかり圧倒されてしまいました。あんなに次々と新しいアイディアが出る人ってこの世にいるんですね。驚きです。町田さんは著書も素晴らしいですが、ライブもすごいと知りました。
虚無の中、けれども相手に投げかけ与えることでかろうじて生き続けることができる、というのは町田さんご自身の深い哲学なのではないでしょうか。町田康の批評家としての凄味に触れることができる良い対談になっていると思います。

2016年8月10日水曜日

9月30日に中村和恵さんと対談します

9月30日の午後7時から下北沢のB&Bで比較文学者・詩人の中村和恵さんと対談をします。
http://bookandbeer.com/event/20160930_worldliterature/
参加には事前の予約が必要です。とはいえ、残っていれば当日券でも入ることはできますが。
タイトルは「文学賞から見える世界文学の最前線」で、こんど立東舎から発売される『世界の8大文学賞』について話します。この本の中で中村さんはノーベル文学賞を担当しています。
凄まじい言語能力でいつも楽しませてくれる中村さん。僕は以前から大ファンです。今回は果たしてどういう話が聞けるのでしょうか。楽しみです。ご興味があれば。


2016年8月9日火曜日

『ちくま』にブコウスキーについて書きました

『ちくま』2016年7月号にブコウスキーについて書きました。
ここで全文を読むことができます。
http://www.webchikuma.jp/articles/-/211
僕の大好きな『パルプ』(柴田元幸訳)がちくま文庫で復刊されたので喜んで書きました。僕の最初の翻訳『勝手に生きろ!』がほぼ同時刊行だったので思い出深い作品です。今読んでもまったく古びていません。ブコウスキーの原文と柴田先生の翻訳がもつ力のおかげだと思います。

2016年8月8日月曜日

ボラーニョ『第三帝国』の解説を書きました

ロベルト・ボラーニョ『第三帝国』(柳原孝敦訳、白水社)の解説を書きました。
http://www.hakusuisha.co.jp/book/b227448.html
舞台はカタルーニャの海辺の町で、ドイツから来たウォーゲームのチャンピオンの青年と、過去に何かがあったらしい、南米から来たらしい男がひたすらゲームをし続ける、という、ボラーニョのなかでも特異な作品です。しかもそのウォーゲームの名前が「第三帝国」なんですから。
ゲーム、ファシズム、ドイツ、南米など、様々な要素が散りばめられた作品になっています。しかもボラーニョの青春っぽさはそのままで。
僕は、南米人が実はボラーニョに限りなく近い人物だと仮定したらどうだろう、という話を書きました。御興味があれば。

2016年8月7日日曜日

8月28日に藤井光さんと対談します

8月28日に下北沢B&Bで藤井光さんと対談します。
午後3時からで、参加には予約が必要です。
http://bookandbeer.com/event/20160828a_bt/
先日、藤井さんは中央公論新社から日本語単著としては初の『ターミナルから荒れ地へ——アメリカなき時代のアメリカ文学』を出されました。今回はこの本を中心に、藤井さんの幅広いお仕事とも絡めていろいろと訊いていきたいと思います。御興味があれば。