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2016年1月30日土曜日

『本の雑誌』2月号新刊めったくたガイド書きました

『本の雑誌』2016年2月号新刊めったくたガイド書きました。
http://www.webdoku.jp/
取り上げた作品は以下の三冊です。

J.M.G.ル・クレジオ『嵐』(中地義和訳、作品社)
李承雨『香港パク』(金順姫訳、講談社)
セサル・アイラ『文学会議』(柳原孝敦訳、新潮社)

ル・クレジオの作品は韓国の離島が舞台で、アフリカ系アメリカ人と韓国人の混血である少女と過去を持つ男性の淡い恋の物語になっています。これが翻訳も文章もとても素晴らしい。まさにノーベル文学賞にふさわしい小説です。
李承雨の『香港パク』は奇妙な味の小説ですね。でもよく読むと、軍の影響が強い韓国社会の暗さがよく伝わってきます。韓国にはいい作家がたくさんいますね。
セサル・アイラ『文学会議』はとても面白いです。軽いタッチで不条理な話が続いていきます。僕の好きなビオイ・カサーレスにちょっと似ているかな。中南米にはこんな作家もいるんですね。

2016年1月29日金曜日

町田康さんと対談をしました

雑誌『公研』2016年1月号で町田康さんと対談をしました。
http://www.koken-seminar.jp/new.htm
あまり書店では見かけないですが、橋爪大三郎さんや山極壽一さんなんかも書いている硬派な雑誌のようです。
対談のタイトルは「いまのアメリカ文学から見るアメリカのいま」という、ちょっと回文のようなものでで、ジュノ・ディアス『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』からベンジャミン・フランクリン、果ては『宇治拾遺物語』や『古今和歌集』まで、すごく多岐にわたる話をしました。
一貫して印象的だったのは、町田さんの素直で謙虚で繊細なお人柄です。しかもこれほどの知性を持った方が世の中にはたして何人いるものだろうか、と話していて思ってしまいました。
かっこいい大人とはこういう人のことを言うのでしょう。
以前から町田さんの作品の大ファンだったのですが、こうした対談が実現して、本当に嬉しいです。町田さん、そして関係者のみなさん、深く感謝しております。

2016年1月25日月曜日

ノーベル文学賞受賞者の予想をしました

Figaro Japon2016年3月号で、今年度のノーベル文学賞受賞者の予想をしました。
http://madamefigaro.jp/magazine/figaro/201603.html
もちろん村上春樹は相変わらずの上位ですが、他にも世界にはこんな作家がいる、というエッセイを書きました。言及したのは以下の5人です。

グギ・ワ・ジオンゴ(ケニア)
ジョイス・キャロル・オーツ(アメリカ合衆国)
イスマイル・カダレ(アルバニア)
高銀(韓国)
セサル・アイラ(アルゼンチン)

2016年1月9日土曜日

『フィガロ・ジャポン』でジュライとミンギュの書評をしました

『フィガロ・ジャポン』2016年2月号でミランダ・ジュライ『あなたを選んでくれるもの』(新潮社)とパク・ミンギュ『亡き王女のためのパヴァーヌ』(クオン)の書評をしました。
http://madamefigaro.jp/magazine/figaro/201602.html
「2015年に感動した本」というコーナーで、僕は2冊選びました。
他に挙げられているのは、カズオ・イシグロ『忘れられた巨人』(早川書房)、川上未映子『あこがれ』(新潮社)、イーユン・リー『独りでいるより優しくて』(河出書房新社)です。

2016年1月7日木曜日

『エル・ジャポン』で青春小説5冊を選びました

『エル・ジャポン』2016年2月号で青春小説を5冊を選びました。
http://www.elle.co.jp/magazine/magazine_elle/20151226
選んだのは以下のとおりです。

太宰治『人間失格』 (新潮文庫ほか)
よしもとばなな『キッチン』(角川文庫)
村上春樹『中国行きのスロウ・ボート』(中公文庫)
朝吹真理子『きことわ』(新潮文庫)
ジャン・コクトー『恐るべき子供たち』(光文社古典新訳文庫)

どれも切なくて痛い、大好きな作品ばかりです。

2016年1月6日水曜日

いしいしんじさんと『すばる』で対談しました

『すばる』2016年2月号でいしいしんじさんと新刊『よはひ』を巡って対談しました。
http://subaru.shueisha.co.jp/
『よはひ』は様々な文体や内容の短篇が集まって長篇になっているという作品です。時空が飛び交いながら、結局は語り手が息子ひとひ君に語りかけているという構成になっているのも読みどころですね。こうした優れた作品について作者の方と直接お話しできて、とても幸せでした。

2016年1月5日火曜日

『本の雑誌』1月号新刊めったくたガイド書きました

『本の雑誌』2016年1月号の新刊めったくたをガイド書きました。
http://www.webdoku.jp/
扱った本は以下のとおりです。

ミシェル・ウェルベック『服従』大塚桃訳、河出書房新社。
キルメン・ウリベ『ムシェ 小さな英雄の物語』金子奈美訳、白水社。
作者未詳『虫めづる姫君 堤中納言物語』蜂飼耳訳、光文社古典新訳文庫。

ウェルベックの『服従』は時事的な絡みもあり話題になっていますが、読んでみればちゃんとした文学作品になっています。現代社会において年老い、疲れ、しかも信仰の助けも得られない現代人がどうやって心の平安を得たらいいのか、という問いかけは普遍的なものなのではないでしょうか。人間の弱さに焦点を当てた鋭い作品です。
ウリベの『ムシェ』には驚きました。バスク語で、こんな現代文学が書かれているんですね。しかもたくさんの言語に訳されてもいます。英語で書かなければグローバルにはなれない、という言説が嘘であることがはっきりとわかります。人間の気持ちをしっかりと書ければ、そして独特の経験をつかまえることができれば、どんな言語でも対等な力を持ち得るんです。たった60万人しか話者がいない言葉をあえて使うウリベが素晴らしい。
『虫めづる姫君』はとてもいいですね。古代のあえかで美しい人々の心情が伝わってきます。しかも蜂飼耳さんの訳文がとてもいいですね。なんとなく感情的な繋がりを感じることのできる外国、としての古典時代にも興味が出てきました。

2016年1月4日月曜日

『ユリイカ』坂口恭平特集に評論「閉じた家、開いた家」を書きました

 『ユリイカ』2016年1月の臨時増刊号『坂口恭平』に評論「閉じた家、開いた家」を書きました。
http://www.seidosha.co.jp/index.php?9784791703005
坂口恭平は『0円ハウス』や独立国家創設など様々な活動で知られています。しかしながら、彼の小説作品は比較的読まれることが少ないのではないでしょうか。
今回は『隅田川のエジソン』『幻年時代』『徘徊タクシー』『家族の哲学』の四冊を主に読み解きながら、彼が小説という形式を通して何をしているのかを読み解いていきます。
坂口の作品における、批判するのでも教育するのでもなく、ただ共にいて聞き流す、という境地は、人がともに生きるための強力な知恵と言えるのではないか、といったことを考えてみました。