ページ

2016年12月31日土曜日

『現代思想』に「トランプと人種差別」というエッセイを書きました

『現代思想』2017年1月号に「トランプと人種差別」というエッセイを書きました。
http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=3005
トランプ当選についての詳細な分析は政治学者に任せて、僕はこの事態に関連して読める文学作品について考えてみました。取り上げた作品はこんな感じです。

マイケル・シェイボン『ユダヤ警官同盟』(新潮文庫)
フィリップ・ロス『プロット・アゲンスト・アメリカ』(集英社)
ロベルト・ボラーニョ『アメリカ大陸のナチ文学』(白水社)
ジュノ・ディアス『こうしてお前は彼女にフラれる』(新潮社)

ラティーノ/ラティーナと呼ばれるラテン系住民の増加がアメリカ社会や文化をどう変えたかに興味があります。あと数十年経ったら、我々が抱いてアメリカ像は根本的に変更しなくてはならなくなりそうです。

2016年12月30日金曜日

1月20日に志賀直哉について話します

2016年1月20日に志賀直哉に国際文化会館で志賀直哉について話します。
https://www.i-house.or.jp/programs/nichibunihj20170120/
日本文学者の郭南燕さんが多言語という立場からみた志賀直哉という講演をされるのですが、そのコメンテーターとしてお話をします。
英語・中国語・フランス語と日本語の間にある言語としての現代日本語を考えた志賀直哉、というのは非常に刺激的な視点ではないでしょうか。日本文学の新しいあり方について考えることかできれば嬉しいです。

2016年12月21日水曜日

『英語教育』11月号にミュリエル・スパークについて書きました

『英語教育』2016年11月号にミュリエル・スパーク『仕上げ学校』について書きました。
http://www.taishukan.co.jp/book/b251694.html
『あなたの自伝、お書きします』を読んでスパークの面白さに開眼しました。底意地が悪く、どんな人でも面白がる主人公が最高です。木村政則さんの翻訳も最高でした。自分の名でスパーク熱が盛り上がってきて、次はFinishing Schoolを読んでしまいました。これも面白かった。
ごく小さな私立学校をやっているカップルと生徒たちの話なのですが、恋や嫉妬など様々な主題が入り交じり、スパーク特有のとぼけた文体で綴られていきます。素晴らしい作品です。

2016年12月20日火曜日

『本の雑誌』11月号の新刊めったくたガイド書きました

『本の雑誌』2016年11月号の新刊めったくたガイド書きました。
http://www.webdoku.jp/
取り上げた本は以下の通りです。

ペーター・シュタム『誰もいないホテルで』(松永美穂訳、新潮社)
戌井昭人『酔狂市街戦』(扶桑社)
渡辺京二『私のロシア文学』(文春学藝ライブラリ)

スイス文学って面白いな、とシュタムの本を読んで思いました。常に森と人との関係が描かれる、という点では辺境文学と言っていいでしょう。ドイツ語圏の現代文学をもっと読んでみたくなりました。
戌井さんの作品はどれも大好きなのですが、これもものすごく染みました。動物とふれあう人の澄んだ目に惹かれるところなんていいなあ。渡辺京二のプーシキン『オネーギン』読解は素晴らしかったです。日本の知識人がはずっと頭でっかちでしかなかった、という指摘は本当にそのとおりです。

2016年12月19日月曜日

『英語教育』10月号に町田康『パンク侍』英語版について書きました

『英語教育』10月号に町田康『パンク侍、斬られて候』の英語版について書きました。
http://www.taishukan.co.jp/book/b245451.html
町田康さんの『宇治拾遺物語』や『義経記』の現代語訳はとても高い評価を得ています。町田さんの小説の醍醐味はそのままに、昔の人々の心の中にまで入っていけるものになっているからです。
では町田さんの小説の英語訳はどうなっているのでしょう。果たして日本語で読んだときの面白さは英語でも変わらないのでしょうか。そして英語になりやすいものだけが世界文学たりえるのでしょうか。

2016年12月18日日曜日

『本の雑誌』10月号の新刊めったくたガイド書きました

『本の雑誌』10月号の新刊めったくたガイド書きました。
http://www.webdoku.jp/
取り上げた本は以下のとおりです。

ミュリエル・スパーク『あなたの自伝、お書きします』木村政則訳、河出書房新社。
町田康『ギケイキ』河出書房新社。
池内紀『カント先生の散歩』潮文庫。

スパークは底意地の悪い感じがたまりません。嫌な人を見ると主人公が面白がってどんどんと深みにはまっていきます。木村さんの訳も最高です。スパーク、あまりにも好きになりすぎて原書でも読み始めてしまいました。
『ギケイキ』は『義経記』の翻訳と創作の中間のような作品です。『宇治拾遺物語』の翻訳で見せてくれた自由闊達さはそのままに、より町田さんの気持ちが入った文章になっています。特に弁慶が孤独に苦しむところはとても印象深いです。
池内紀さんの作品は、カントの思想というより人柄に迫っていきます。こういう、優しい表現でジワーッと心の中に入ってくるような文章が書ける大人になりたいな、と常々思ってきました。今回改めて池内さんの素晴らしさを知りました。

2016年12月8日木曜日

12月24日に中村和恵さんとイベントをします

2016年12月24日に中村和恵さんや平凡社ライブラリー編集長Tさんと、下北沢のB&Bでイベントをします。
http://bookandbeer.com/event/20161224_trumpet/
時間は午後3時スタート、予約が必要です。
タイトルは「ほんとうの伝えかた:LGBTと世界文学をめぐって」で、中村さんが訳したジャッキー・ケイ『トランペット』(岩波書店)の刊行記念イベントになっています。この本に関してだけではなく、平凡社ライブラリーのLGBT関連アンソロジーその他についても話す予定です。
クリスマスイヴの午後に、愛や性について考えるのもいいのではないでしょうか。ご興味があれば。

筒井康隆さんのインタビューが掲載されました

2017年1月号の『文學界』に、筒井康隆さんのインタビューが掲載されました。
http://www.bunshun.co.jp/mag/bungakukai/
僕が聞き手を務めさせていただいております。これは昨年10月に東京大学本郷キャンパスで行ったイベントの記録です。お忙しいところ貴重な時間を割いてくださった筒井さん、見に来てくださった観客のみなさん、素晴らしい原稿にまとめてくださった『文學界』のスタッフ、そしてこうした機会を与えてくださった飯田橋文学会のみなさん、どうもありがとうございました。あらためて、深く感謝しております。

2016年12月7日水曜日

北海道新聞でトランプのアメリカがわかる3冊を選びました

少し前になってしまいましたが、11月25日付けの北海道新聞で、トランプのアメリカがわかる3冊を選びました。
http://dd.hokkaido-np.co.jp/
とはいえ、具体的な分析は他の方に任せて、僕は移民の女性を扱った3冊にしました。具体的には、

・チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ『アメリカーナ』くぼたのぞみ訳、河出
書房新社、2016年。
・ノヴァイオレット・ブラワヨ『新しい名前』谷崎由依訳、早川書房、2016年。
・ジュリー・オオツカ『屋根裏の仏さま』岩本正恵・小竹由美子訳、新潮社、
2016年。

社会の矛盾は一番弱いところに出ると思います。この3冊を読むと、新しい国に移ってきた人々がどんな事を感じるか、どういうことを経験するのかが、ものすごくリアルにわかります。そして読書を通じて、いつのまにか読者である我々の想像力の範囲も広がっていくのです。こうした文学の次元って、地味だけどとても大切ですよね。

12月10日(土)に東京外国語大学でシンポジウムをします

直前のお知らせになってしまいましたが、2016年12月10日(土)に東京外国語大学でシンポジウムをします。タイトルは『和田忠彦教授退任記念シンポジウム 遊戯のはじまり』です。
スタートは午後1時からで、予約は不要です。
僕はリディア・デイウィスやジュノ・ディアスについて語りながら、翻訳と文学の関係について考えてみようと思っています。ご興味があれば。
https://tufstoday.com/articles/161206-3/


2016年11月16日水曜日

町田康さんとの対談をaudibleで聞くことができます

以前ラカグで町田康さんとやった夏目漱石『吾輩は猫である』を巡る対談をaudibleで聞くことができます。
https://goo.gl/6HAfCp
町田さんがいかに天才であるかがしみじみわかる対談です。本番中、僕は舞台の上でひたすら衝撃を受けていました。

2016年11月13日日曜日

『週刊新潮』に坂口恭平『現実宿り』の書評を書きました

『週刊新潮』2016年11月17日号に坂口恭平の『現実宿り』(河出書房新社)の書評を書きました。
http://www.shinchosha.co.jp/shukanshincho/
坂口恭平といえば0円ハウスにとどまらず、様々な興味深い活動をつづけています。その一つが文学作品の執筆です。既成の枠組みに収まりきらない作品は、新たな手触りに満ちています。それをなんとか言葉でつかまえてみようと今回は試みました。

ここで全文を読むことができます。
http://www.bookbang.jp/review/article/521389

2016年11月10日木曜日

今日の読売新聞にコメントを載せています

本日2016年11月10日の読売新聞朝刊に、トランプ大統領当選を受けてのコメントを載せています。
http://www.yomiuri.co.jp/
ユダヤ系の作家フィリップ・ロスの『プロット・アゲインスト・アメリカ』について触れながら、アメリカ白人の本音について考えてみました。

2016年10月21日金曜日

11月4日に福岡でイベントをします

2016年11月4日に福岡のRethink Booksでイベントをします。
http://rethinkbooks.jp/event/1385
タイトルは「世界の小説についてお話しいたします」で、対談相手は作家・翻訳家の谷崎由依さんです。これは『世界の8大文学賞』(立東舎)発売記念イベントとなります。
福岡でイベントをするのは久しぶり、とりわけRethink Booksでは初めてなので楽しみです。福岡在住の皆様、お会いできるのを楽しみにしております。

2016年10月14日金曜日

本日の『毎日新聞』でノーベル文学賞についてコメントしています

本日2016年10月14日の『毎日新聞』でノーベル文学賞についてコメントしています。
http://mainichi.jp/articles/20161014/ddm/003/040/133000c
ボブ・ディラン受賞には驚きましたね。もちろんディランが認められたことは素晴らしいことですが。
昨年のアレクシェーヴィチも予想外でした。
ノンフィクション作家、シンガーソングライターと、詩人や小説家など過去の受賞者とは違う傾向がここ数年出てきたことについて語っています。

2016年10月6日木曜日

本日の『朝日新聞』でノーベル文学賞についてコメントしています

本日2016年10月6日の『朝日新聞』でノーベル文学賞についてコメントしています。
http://www.asahi.com/articles/ASJ9Y61FZJ9YUCVL00Q.html?iref=comtop_8_01
特に英語訳の出来が受賞するかどうかを左右するのではないかと論じました。村上春樹の英語訳は、第二の原典として世界中に普及しています。日本文学としてこれはとても新しい現象だと思います。

TOKYO-FMでノーベル文学賞について話しました

TOKYO-FMの『中西哲生のクロノス』という朝の番組でノーベル文学賞について話しました。
http://www.jfn.co.jp/ch/
世界文学の在り方から村上春樹受賞の可能性まで、幅広くお話しすることがてきました。とても良心的な番組づくりで、TOKYO-FMのすばらしさをあらためて感じました。

2016年9月21日水曜日

『週刊新潮』で、いしいしんじ『海と山のピアノ』について書きました

『週刊新潮』2016年9月22日号で、いしいしんじ『海と山のピアノ』(新潮社)について書きました。
http://www.shinchosha.co.jp/shukanshincho/
先日、三島由紀夫賞の受賞会見で蓮實重彦先生が、賞はいしいしんじさんに渡すべきである、とおっしゃっていましたが、この作品を読むとその言葉の意味がわかります。
児童文学とも大人の文学ともつかない設定、密度の高い文章、極端にレベルの高い作品を書くいしいしんじさんは、現代日本における最高峰の書き手と言っていいでしょう。
ラカグで行われた本書出版記念の人形劇も楽しかったです。いしいさん自身が一人で何役もこなしたりして。蓄音機の音楽も良くあっていたな。

2016年9月8日木曜日

10月4日に筒井康隆さんにインタビューをします

10月4日に東京大学本郷キャンパスの福武ホールで筒井康隆さんにインタビューをします。
http://new.lib.u-tokyo.ac.jp/4206
東大生向けの学内受付(40名)は終了したのですが、一般受付は13日の12時からです。上記のサイトで事前の受付が必要です。定員は80名です。
この企画では課題図書を三冊決め、それを中心にお話をうかがっていきます。三冊+参考図書一冊は以下のとおりです。

課題図書
・『日本以外全部沈没』(角川文庫)
・『虚人たち』(中公文庫)
・『世界はゴ冗談』(新潮社)

参考図書
・『着想の技術』(新潮文庫、絶版、ただしkindle版はあり)

筒井さんに創作についてお聞きできるというのは貴重な機会ですね。楽しみにしております。


2016年9月2日金曜日

『英語教育』5月号に雑誌『フリーマンズ』について書きました

『英語教育』2016年5月号に雑誌『フリーマンズ』について書きました。
http://www.taishukan.co.jp/book/b222752.html
『フリーマンズ』は元『グランタ』編集長ジョン・フリーマンさんが作った雑誌で、とても面白い記事が満載されています。中でも、リディア・デイヴィスがノルウェー語ゼロで、むりやりダーグ・ソールスターの原語の作品を読もうと試み、ついに読み切ってしまう衝撃のノンフィクション「ノルウェー語を学ぶ」はすごかったです。アレクサンダル・ヘモンの短編もよかったな。

2016年9月1日木曜日

『本の雑誌』5月号の新刊めったくたガイド書きました

『本の雑誌』2016年5月号の新刊めったくたガイド書きました。
http://www.webdoku.jp/
取り上げた本は以下のとおりです。

ジョイス・キャロル・オーツ『邪眼』栩木玲子訳、河出書房新社。
リュドミラ・ウリツカヤ『陽気なお葬式』奈倉有里訳、新潮社。
ワールポラ・ラーフラ『ブッダが説いたこと』今枝由郎訳、岩波文庫。

ノーベル文学賞候補とも言われているオーツですが、日本ではいま一つ読まれていないようです。この本では、いつまでも少年でいたがるナルシストの男に周囲の女性たちが振り回され、不幸になる状況が描かれています。成熟できない男性がいかに迷惑な存在かがよくわかります。
ウリツカヤの作品の主人公も変わった男性です。しかしながらどんな状況も楽しめる彼は、周りの人々を明るくしていく力を持っています。そして多くの女たちが彼のところに集まるのです。
ラーフラの本は優れた仏教入門になっています。自分を捨て、目の前のことに没頭して、他人に与えること。それをマインドフルとも呼べるでしょうが、こんなに昔にブッダは人生の答えを出してしまっています。自分探しの次のステップがよく分かる本です。

2016年8月31日水曜日

『英語で読む村上春樹』5月号にジュンパ・ラヒリ『停電の夜に』について書きました

 『英語で読む村上春樹』2016年5月号にジュンパ・ラヒリの『停電の夜に』について書きました。
https://cgi2.nhk.or.jp/gogaku/english/yomu/
ジュンパ・ラヒリの『停電の夜に』は非常にたくさん売れた作品です。読んでみると、恋愛結婚をしたカップルがすぐに別れたり、お見合い結婚のカップルが長く添い遂げたりと、通常の現代アメリカ文学ではおよそ考えられないテーマ設定になっています。もちろん彼女のインドという背景が大きく関係しているのでしょう。そして彼女の作品のこうした側面は、日本人の読者にとっても遠くないと思います。

2016年8月28日日曜日

『英語教育』6月号にフィリップ・ロス『プロット・アゲインスト・アメリカ』について書きました

 『英語教育』2016年6月号にフィリップ・ロスの『プロット・アゲインスト・アメリカ』について書きました。
http://www.taishukan.co.jp/book/b227490.html
ナチスのユダヤ人虐殺は遠い昔のこと、というイメージがあるかもしれませんが、この作品では人種差別主義者の大統領が当選したあと、アメリカがファシズム国家に変わり、ついにユダヤ人が殺され始めてしまいます。フィリップ・ロスの社会批判はいつも通りとても深いですね。作品としてもとても充実しています。柴田元幸先生による翻訳も素晴らしいクオリティです。もっとみんなロスを読もう。

2016年8月27日土曜日

『英語で読む村上春樹』6月号にアリス・マンローについて書きました

『英語で読む村上春樹』2016年6月号にアリス・マンロー『小説のように』について書きました。
https://cgi2.nhk.or.jp/gogaku/english/yomu/
ノーベル文学賞受賞作家というと、なんだか難しい感じがします。でもマンローはまったくそんなことありません。カナダの小さな町に住みながら、普通の人々の思いに寄り添うマンローは、現代文学に親しみのない方々にも楽しんでもらえる作品を書いていると思います。


2016年8月26日金曜日

(再掲)8月28日に下北沢B&Bで藤井光さんと対談します

明後日8月28日に下北沢B&Bで藤井光さんと対談します。
午後3時からで、参加には予約が必要です。
http://bookandbeer.com/event/20160828a_bt/
先日、藤井さんは中央公論新社から日本語単著としては初の『ターミナルから荒れ地へ——アメリカなき時代のアメリカ文学』を出されました。今回はこの本を中心に、藤井さんの幅広いお仕事とも絡めていろいろと訊いていきたいと思います。御興味があれば。

『本の雑誌』6月号の新刊めったくたガイド書きました

『本の雑誌』2016年6月号の新刊めったくたガイドを書きました。
http://www.webdoku.jp/
取り上げた作品は以下のとおりです。

ジュリー・オオツカ『屋根裏の仏さま』岩本正恵・小竹由美子訳、新潮社。
ル・クレジオ『ラガ』管啓次郎訳、岩波書店。
町田康『リフォームの爆発』幻冬舎。

オオツカの『屋根裏の仏さま』は、戦前アメリカに渡った日本人の女性たちがどんなに辛い人生をおくったかを綴った作品です。特徴的なのは、特定の個人に焦点を当てるのではなく、集団としての彼女たちという視点から書かれていることです。一人になったり複数になったりしながら、小説と歴史の間の語りが続いていきます。
訳者の岩本正恵さんは数年前に亡くなりました。とても素晴らしい人格で、実力も高かった方で、翻訳界にとっては大きな損失でした。僕もずいぶん親切にしていただきました。この作品では小竹由美子さんが引き継ぐ形で作品を完成させていらっしゃいます。ありがたいことです。
ル・クレジオの作品は最近とてもいいですね。バヌアツを舞台に、南太平洋で行われた奴隷制などの歴史が語られていきます。これはエッセイと歴史、小説の間のような作品ですね。ノーベル賞受賞後も進化し続けるなんて凄すぎます。
町田康さんの『リフォームの爆発』も面白かったです。小説になり、建築エッセイになりと、ジャンルを問わない文章は常に魅力的です。今回は現実から浮き上がった「真理」が文学を殺してしまう、という町田さんの主張について書きました。こういうことをおっしゃっているのを見ると、人としても書き手としても本当に信頼できる方だなあ、と思います。

2016年8月25日木曜日

『英語教育』7月号にバンヴィル『海に帰る日』について書きました

『英語教育』2016年7月号にジョン・バンヴィルの『海に帰る日』について書きました。
http://www.taishukan.co.jp/book/b238607.html
現代アイルランドを代表する作家、バンヴィルの『海に帰る日』は興味深い細部に満ちた作品です。妻がガンで弱っていく仮定と少年の日の恋が交錯しながら、その両方ともそぐわないエピソードや感覚がたくさん挿入されていきます。小説を読む喜びとは何か、現代において小説を書くとはどういうことかについて考えさせられる、とても優れた作品になっていると思います。

2016年8月20日土曜日

『本の雑誌』7月号の新刊めったくたガイド書きました

『本の雑誌』2016年7月号の新刊めったくたガイドを書きました。
http://www.webdoku.jp/
取り上げた作品は以下のとおりです。

オルハン・パムク『僕の違和感』宮下遼訳、早川書房。
リービ英雄『模範郷』集英社。
嵐山光三郎『漂流老人・きだみのる』小学館。

パムクの『僕の違和感』は、呼び売り商人である主人公の目を通して近代化していくイスタンブールを体験できる優れた作品です。家族で『大草原の小さな家』を見たり、『ダラス』を見たりと、トルコってなんとなく日本っぽいですよね。若き俊英の宮下さんは、本当にいい仕事を凄まじい速さでしています。
リービ英雄の『模範郷』は、子供時代を過ごした台湾に、長い時を経て帰郷する、という作品です。小説とノンフィクションの間くらいかな。中国と日本とアメリカという三つの軸で思考することがどれだけ刺激的かがよくわかります。
嵐山光三郎のきだみのる論ですが、本当に魅力的な作品ですよね。読んでいると、今よりもっと自由だったころの日本がかつてあった、という気がします。もちろんそれは錯覚で、破天荒な思想家であるきだが作り出した一瞬の幻想空間だったわけですが。
日本を内と外から同時に見る視点が大切だ、と思い知りました。

2016年8月19日金曜日

『週刊新潮』に中村文則『私の消滅』について書きました

 『週刊新潮』2016年7月14日号に中村文則の『私の消滅』について書きました。
http://www.shinchosha.co.jp/shukanshincho/backnumber/20160707/
中村文則は本当に優れた作家だと思います。文章もいいですし、男性の暴力や個人の自由意志の問題など、最先端の主題を扱っています。海外でも高く評価されているのは納得です。

本文はここで読めます。
http://www.bookbang.jp/review/article/515211

2016年8月18日木曜日

『英語教育』8月号に ウエルベック『地図と領土』について書きました

『英語教育』の8月号にミシェル・ ウエルベック『地図と領土』(ちくま文庫)について書きました。
http://www.taishukan.co.jp/book/b240509.html
フランスがイスラム教徒によって統治される日を描く『服従』で話題を集めたウエルベックですが、実際に読んでみると、現代に生きることの困難さと正面から取り組んでいる、非常に優れた作家です。ゴンクール賞を獲得した『地図と領土』も名作です。本稿では労働することの喜びに焦点を当てて書いてみました。

2016年8月17日水曜日

『基礎英語1』2016年8月号にエッセイを書きました

『基礎英語1』2016年8月号にエッセイを書きました。
https://www2.nhk.or.jp/gogaku/english/basic1/
小学生時代の英語との出会いや、そのあとどういうふうに勉強を進めたのかについて書いてみました。中学一年生向けに文章を書く、というのは自分にとって、とても楽しい挑戦でした。ご興味があれば。

2016年8月16日火曜日

『本の雑誌』8月号の新刊めったくたガイド書きました

『本の雑誌』2016年8月号の新刊めったくたガイド書きました。
http://www.webdoku.jp/
取り上げた作品は以下のとおりです。

キム・ヨンス『ワンダーボーイ』きむ・ふな訳、クオン。
鈴木大拙『禅堂生活』横川顕正訳、岩波文庫。
伊藤比呂美『ラニーニャ』岩波現代文庫。

クオンから出た待望の現代韓国文学最新作はキム・ヨンスのこの本です。交通事故の衝撃で人の心の中がわかるようになった少年が、80年代の韓国を駆け抜けます。戦争と学生運動と消費社会が並列するこの作品は、まるで日本の戦後を凝縮して見せてくれているようです。日本について考える上でも、現代韓国文学は大きな手がかりを与えてくれると思います。
鈴木大拙がもとは英語で書いた『禅堂生活』には、経済大国や軍事大国ではない、もう一つの日本が描かれています。それは慈悲の心に基づいた国です。そうした国になるには、我々一人一人の内面の変化が必要となってくるでしょう。
伊藤比呂美の『ラニーニャ』を読んでいると、日本語とカリフォルニアの光が出会ったことでこんなに新鮮な言葉が生まれるんだ、と感銘を受けます。南北アメリカ文学が、ヨーロッパの言語とアメリカの自然との出会いによって生まれたように。ここには新しい形の移民文学があります。

2016年8月15日月曜日

『早稲田文学』に夏目漱石『坊っちゃん』について書きました

『早稲田文学』2016年夏号に夏目漱石の『坊っちゃん』について書きました。
http://www.bungaku.net/wasebun/magazine/index.html#2016sum
タイトルは「友達の作り方」です。この原稿のために『坊っちゃん』を読み返しましたが、やっぱり最高ですね。夏目漱石って本当に素晴らしいです。

2016年8月14日日曜日

『英語教育』9月号にハン・ガン『菜食主義者』について書きました

『英語教育』2016年9月号にハン・ガン『菜食主義者』(クオン)について書きました。
http://www.taishukan.co.jp/book/b243629.html
世界的にも権威あるブッカー国際賞を今年受賞したハン・ガンの『菜食主義者』。
http://shop.chekccori.tokyo/products/detail/58
クオンから刊行されている日本語版を読んでもわかるように、食べることを拒否する一人の女性の人生について強烈なイメージを駆使しながら繊細な文章で描いています。そのマッチョ批判は、韓国社会だけでなく広く現代世界を覆う悪を告発しているようにも思えます。隣国でこんなにも優れた文学が現在書かれていることに驚きました。

2016年8月13日土曜日

『本の雑誌』9月号の新刊めったくたガイド書きました

『本の雑誌』2016年9月号の新刊めったくたガイド書きました。
http://www.webdoku.jp/honshi/
取り上げた本は以下のとおりです。

リディア・デイヴィス『分解する』岸本佐知子訳、作品社。
くぼたのぞみ『鏡のなかのボードレール』共和国。
ミラン・クンデラ『小説の技法』西永良成訳、岩波文庫。

デイヴィスの作品は以前から本当に大好きです。今回岸本さんの訳で読み直してみて、女性として生きることの困難さをデイヴィスが扱っていることに遅まきながら気づきました。深い。
くぼたさんの本はボードレールから有色の女性の人生の話になり、クッツェー論につながっていくという壮大なものです。たった200ページほどでこれだけを書いたのはすごい。個人的には、日本の男性読者たちが女性として世界を見ることができるのが、現在文学を読むことの大きな意義の一つとなる、という一節にシビれました。地に足のついた、愛の籠もったフェミニズム、という感じですよね。
クンデラの本を読むのは久し振りなんですけど、やっぱりいいですね。小説とは、正しさが一つしかないと考える人々に対抗するためにある、という言葉は現代的な意義が大いにあると思います。クンデラって、未来の作家なのかもしれません。おすすめです。

2016年8月12日金曜日

『英語で読む村上春樹』にインタビューが収録されました

『英語で読む村上春樹』2016年9月号(NHK出版)にインタビューが収録されました。
https://cgi2.nhk.or.jp/gogaku/english/yomu/
村上春樹がアメリカ文学などの影響を受けながら、やがて世界に与えるようになった状況について語りました。ラジオ放送時よりだいぶ長めに収録されています。ご興味があれば。

2016年8月11日木曜日

『考える人』で町田康さんと対談しました

『考える人』2016年夏号で町田康さんと対談しました。
タイトルは「『吾輩は猫である』を読む」で、そのとおり夏目漱石の『猫』について語り合っています。
http://kangaeruhito.jp/articles/-/1755
いろいろと準備して対談に臨んだのですが、町田さんがあまりにも天才すぎて、すっかり圧倒されてしまいました。あんなに次々と新しいアイディアが出る人ってこの世にいるんですね。驚きです。町田さんは著書も素晴らしいですが、ライブもすごいと知りました。
虚無の中、けれども相手に投げかけ与えることでかろうじて生き続けることができる、というのは町田さんご自身の深い哲学なのではないでしょうか。町田康の批評家としての凄味に触れることができる良い対談になっていると思います。

2016年8月10日水曜日

9月30日に中村和恵さんと対談します

9月30日の午後7時から下北沢のB&Bで比較文学者・詩人の中村和恵さんと対談をします。
http://bookandbeer.com/event/20160930_worldliterature/
参加には事前の予約が必要です。とはいえ、残っていれば当日券でも入ることはできますが。
タイトルは「文学賞から見える世界文学の最前線」で、こんど立東舎から発売される『世界の8大文学賞』について話します。この本の中で中村さんはノーベル文学賞を担当しています。
凄まじい言語能力でいつも楽しませてくれる中村さん。僕は以前から大ファンです。今回は果たしてどういう話が聞けるのでしょうか。楽しみです。ご興味があれば。


2016年8月9日火曜日

『ちくま』にブコウスキーについて書きました

『ちくま』2016年7月号にブコウスキーについて書きました。
ここで全文を読むことができます。
http://www.webchikuma.jp/articles/-/211
僕の大好きな『パルプ』(柴田元幸訳)がちくま文庫で復刊されたので喜んで書きました。僕の最初の翻訳『勝手に生きろ!』がほぼ同時刊行だったので思い出深い作品です。今読んでもまったく古びていません。ブコウスキーの原文と柴田先生の翻訳がもつ力のおかげだと思います。

2016年8月8日月曜日

ボラーニョ『第三帝国』の解説を書きました

ロベルト・ボラーニョ『第三帝国』(柳原孝敦訳、白水社)の解説を書きました。
http://www.hakusuisha.co.jp/book/b227448.html
舞台はカタルーニャの海辺の町で、ドイツから来たウォーゲームのチャンピオンの青年と、過去に何かがあったらしい、南米から来たらしい男がひたすらゲームをし続ける、という、ボラーニョのなかでも特異な作品です。しかもそのウォーゲームの名前が「第三帝国」なんですから。
ゲーム、ファシズム、ドイツ、南米など、様々な要素が散りばめられた作品になっています。しかもボラーニョの青春っぽさはそのままで。
僕は、南米人が実はボラーニョに限りなく近い人物だと仮定したらどうだろう、という話を書きました。御興味があれば。

2016年8月7日日曜日

8月28日に藤井光さんと対談します

8月28日に下北沢B&Bで藤井光さんと対談します。
午後3時からで、参加には予約が必要です。
http://bookandbeer.com/event/20160828a_bt/
先日、藤井さんは中央公論新社から日本語単著としては初の『ターミナルから荒れ地へ——アメリカなき時代のアメリカ文学』を出されました。今回はこの本を中心に、藤井さんの幅広いお仕事とも絡めていろいろと訊いていきたいと思います。御興味があれば。

2016年7月28日木曜日

著書『世界の8大文学賞』が出ます

2016年9月23日に『世界の8大文学賞 受賞作から読み解く現代小説の今』が立東舎から発売されます。
https://goo.gl/qqNZN8
芥川賞、直木賞といった国内、そしてノーベル文学賞、ブッカー賞といった海外の主要な文学賞8つを選んで、受賞作を持ち寄り、ひたすら鼎談し続けました。キツかったけどだいぶ勉強になりました。目次は以下のとおりです。

1 これを獲ったら世界一?「ノーベル文学賞」
都甲幸治×中村和恵×宮下遼
登場作家:アリス・マンロー、オルハン・パムク、V・S・ナイポール

2 日本で一番有名な文学賞「芥川賞」
都甲幸治×武田将明×瀧井朝世
登場作家:黒田夏子、小野正嗣、目取真俊

3 読み始めたら止まらない「直木賞」
都甲幸治×宮下遼×石井千湖
登場作家:東山彰良、船戸与一、車谷長吉

〈コラム〉まだまだあるぞ世界の文学賞 都甲幸治

4 当たり作品の宝庫「ブッカー賞」
都甲幸治×武田将明×江南亜美子
登場作家:ジョン・バンヴィル、マーガレット・アトウッド、ヒラリー・マンテル

5 写真のように本を読む「ゴンクール賞」
都甲幸治×藤野可織×桑田光平
登場作家:マルグリット・デュラス、ミシェル・ウエルベック、パトリック・モディアノ

6 アメリカとは何かを考える「ピュリツァー賞」
都甲幸治×藤井光×谷崎由依
登場作家:ジュンパ・ラヒリ、スティーヴン・ミルハウザー、エドワード・P・ジョーンズ

〈コラム〉文学賞に縁のない作家たち 藤井光

7 チェコの地元賞から世界の賞へ「カフカ賞」
都甲幸治×阿部賢一×石井千湖
登場作家:フィリップ・ロス、閻連科、エドゥアルド・メンドサ

8 理解するということについて「エルサレム賞」
都甲幸治×阿部公彦×倉本さおり
登場作家:J・M・クッツェー、イアン・マキューアン、イスマイル・カダレ

発売はちょっと先ですが、御興味があれば。

2016年7月12日火曜日

7月22日に柳原孝敦さんと対談します

7月22日に紀伊國屋書店新宿南店で柳原孝敦さんと対談します。

https://www.kinokuniya.co.jp/c/store/Shinjuku-South-Store/20160708163647.html

場所は3階のふらっとすぽっとで午後6時半から、予約不要・入場無料です。
ロベルト・ボラーニョ『第三帝国』発売記念で、僕はこの本の解説も書かせていただいています。
カタルーニャの海岸のリゾートホテルでドイツ人の青年が謎の中南米人と延々ウォーゲームをやる、という作品で、ボラニーョならではの楽しみに満ちた作品です。
柳原孝敦さんはこの『第三帝国』意外にも、『野生の探偵たち』を訳していらっしゃいますよね。バスケスやアイラもとても面白かったです。水準の高い素晴らしいお仕事を続けている方です。
ラテンアメリカ文学だけでなく、現代の世界文学に御興味がある方はぜひ。

2016年6月28日火曜日

7月3日『英語で読む村上春樹』に出演します

7月3日に、NHKラジオ第二の『英語で読む村上春樹』に出演します。
https://cgi2.nhk.or.jp/gogaku/english/yomu/
ゲストのコーナーで、村上春樹の海外での読まれ方や、村上春樹による外国文学の日本語訳について語りました。

本放送 7月3日(日)23:00~23:30
再放送 7月9日(土)12:10~12:40

なお本放送の翌週、月曜午前10:00から1週間ストリーミング放送もあります。

2016年4月21日木曜日

バスケス『物が落ちる音』書評しました

2016年4月17日の北海道新聞でフアン・ガブリエル・バスケス『物が落ちる音』(松籟社)を書評しました。
http://dd.hokkaido-np.co.jp/cont/books/2-0055661.html?page=2016-04-17
コロンビアの作家というと何と言ってもマルケスが有名ですが、続々と若い世代が現れているようです。バスケスのこの作品は、麻薬戦争やアメリカとの関係を踏まえて、個人や国家はどのようにトラウマを乗り越えるかが淡々と書かれています。
繊細で大胆な筆致は、普段中南米文学を読み慣れていない人でも楽しめるのではないでしょうか。
バスケスは4月26日に東京外国語大学でイベントもするようです。御興味がある方はぜひ。
http://www.tufs.ac.jp/event/general/jg.html

2016年4月12日火曜日

青山南編訳『パリ・レヴュー・インタビュー』書評しました

 2016年4月16日号の図書新聞一面で青山南編訳『パリ・レヴュー・インタビュー』(岩波書店)の書評をしました。
http://toshoshimbun.jp/books_newspaper/week_article.php
かなり長い書評になっています。
この度岩波書店から上下二冊組で刊行された本書ですが、主に英語圏の文学を理解する上では非常に優れたものとなっています。取り上げられている作家も、ヘミングウェイ、モリソン、マンローなど、現代を代表する作家ばかりです。しかもインタビューの質が素晴らしいです。何度も作家のところに通って作った原稿を圧縮し、作家本人にも加筆してもらっているそうです。この本を読めば、現代文学に関する見通しはかなり明るくなるのではないでしょうか。
青山南さんはコツコツと本当に素晴らしい仕事をなさっていらっしゃいますよね。こういう先輩の生きざまを見習いながら僕も頑張って行きたいです。

4月23日追記
ウェブ上に全文が公開されました。
http://www1.e-hon.ne.jp/content/toshoshimbun_3251_2-1.html

2016年4月3日日曜日

『東欧の想像力』に「英語のなかの東欧系文学」を書きました

奥彩子・西成彦・沼野充義編『東欧の想像力』(松籟社)に「英語のなかの東欧系文学」を書きました。
http://shoraisha.com/main/book/9784879843432.html
編者の方々を初め、非常に優れた研究者が集まって東欧文学について解説したガイドブックです。僕はアメリカ文学における東欧のイメージについて書きました。こうした機会を与えていただきどうもありがとうございました。

「英語教育』でジョイス・キャロル・オーツについて書きました

「英語教育』2016年4月号でジョイス・キャロル・オーツについて書きました。
http://www.taishukan.co.jp/book/b220195.html
これは「世界の小説と現代人のこころ」という連載で、まずは一年ほど続く予定です。アメリカ合衆国を初めとする海外の文学について、思うところをゆったりと書いていきたいと思っています。
大修館書店の『英語教育』といえば、2007年から2008年まで「サブカルチャー探検隊」というタイトルで、アメリカ合衆国の映画やアニメなどについて連載していました。僕の初めての連載でした。これはまだ単行本には収録されていませんが。早いものであれから10年ほど経つんですね。
考えてみれば、あそこで書くことについて初めて本格的に鍛えられた気がします。恩返しも含めて、今回もがんばって書いていきたいと思っています。

『MONKEY』で2016年の文学の座談会に出席しました

『MONKEY』2016年春号で「妄想・歴史・写実」というタイトルの座談会に出席しました。
http://www.switch-store.net/SHOP/MO0008.html
他の出席者は以下のとおりです。

小野正嗣さん、松田青子さん、宮下遼さん、柴田元幸さん

優れた人ばかりで、とても勉強になりました。本当にみなさん、海外文学をよく読んでいますね。ぼくもがんばらなくちゃと思いました。どうもありがとうございました。

『英語で読む村上春樹』2016年4月号にパク・ミンギュについて書きました

『英語で読む村上春樹』(NHK出版)2016年4月号テキストにパク・ミンギュ『カステラ』について書きました。
タイトルは「村上春樹を引き継ぐ--パク・ミンギュ『カステラ』」です。
https://www2.nhk.or.jp/gogaku/english/yomu/
今や村上春樹の作品は古典として世界に拡がり、若い作家たちが作品を書いていくフォーマットにさえなっています。ここでは韓国のパク・ミンギュを取り上げ、彼が村上作品を踏まえながらどんなオリジナルな小説を書いているかについて考えてみました。
なお、このコラムは3ヶ月集中連載になっています。


2016年3月16日水曜日

江南亜美子さんとのイベントの様子がアップされました

3月13日に京都で行った江南亜美子さんとの対談ですが、様子がAmuのサイトにアップされました。
http://amu-kyoto.tumblr.com/post/140966081282/sekaibungakureport
Amuの担当者のみなさま、江南亜美子さん、どうもありがとうございました。

2016年3月12日土曜日

『本の雑誌』4月号の新刊めったくたガイド書きました

『本の雑誌』4月号の新刊めったくたガイドを書きました。
http://www.webdoku.jp/
取り上げた本は以下のとおりです。

イアン・マキューアン『未成年』(村松潔訳、新潮社)
ロマン・ロラン『ピエールとリュース』(渡辺淳訳、鉄筆文庫)
ヴラジーミル・マヤコフスキー『150000000』(小笠原豊樹訳、土曜社)

マキューアンの作品にはめちゃくちゃしびれました。輸血拒否裁判がテーマになっているのですが、実はそこが重要ではなく、人生には論理だけでない、無根拠な愛としか言いようのないものが大切なんだ、という展開が素晴らしい。本当に、いつかノーベル賞を取ってほしい作家です。
ロランの古典的な作品ですが、感覚が現代的で驚きました。本当に、第一次世界大戦で死に怯える若者たちの心が、今のものとして迫ってきます。ロランはすごい作家だと思いました。こういう純粋な恋愛もいいですね。ガラス越しのキスとか、最高です。
マヤコフスキーの詩は好きで大学生のころよく読んでいました。こうした本を出してくれる土曜社には感謝です。ソ連は無くなってもマヤコフスキーの詩は消えないところに文学の力を感じました。

FUTABA+京都マルイ店で都甲幸治・江南亜美子ブックフェアやってます

FUTABA+京都マルイ店で「今読むべき海外小説ブックリスト 選者:都甲幸治・江南亜美子」やってます。
http://fb.me/UI20FahP
これは明日京都Amuで午後3時から開かれる僕と江南さんの対談イベントと連動した企画です。
http://amu-kyoto.tumblr.com/post/138139522412/sekaibungaku
御興味があれば。

『本の雑誌』3月号新刊めったくたガイド書きました

『本の雑誌』3月号の新刊めったくたガイドを書きました。
http://www.webdoku.jp/
取り上げた本は以下のとおりです。

ロベルト・ボラーニョ『はるかな星』(斎藤文子訳、白水社)
温又柔『台湾生まれ 日本語育ち』(白水社)
ミハイル・ブルガーコフ『犬の心臓・運命の卵』(増本浩子、ヴァシリー・グレチュコ訳、新潮文庫)

ボラーニョはいつもどおり最高ですね。『アメリカ大陸のナチ文学』収録の短篇を拡大して一冊にした作品ですが、残酷で鮮烈で切ない文章がたまりません。温又柔さんのエッセイもいいですね。日本や日本語について考えるにはむしろ台湾などから見た方がいい、ということが良く分かる本です。ブルガーコフもなかなかおもしろいですね。科学の限界について考えさせられます。

2016年3月6日日曜日

3月22日に町田康さんと対談します

3月22日に神楽坂のラカグで町田康さんと対談します。
http://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/01710cy29xmu.html
お題は夏目漱石『我が輩は猫である』で、二人で対談したあと、来場者との意見交換もある予定です。
現代日本文学を代表する作家であると同時に、文学作品を鋭く読み解く批評家としての顔も持つ町田康さん。今回は古典である漱石作品をどう読んでくださるのでしょうか。文学と笑い、動物を視点に書くことについてなど、様々なおもしろいお話が聞けそうです。今からとても楽しみにしています。御興味があればぜひお越しください。

2016年3月3日木曜日

4月13日に石井千湖さんと対談をします

4月13日の午後7時から下北沢のB&Bで、書評家の石井千湖さんと対談をします。
http://bookandbeer.com/event/20160413_tokoukouji/
タイトルは「ねえ、最近、面白い本読んだ?」で、鼎談で綴る読書ガイド『きっとあなたは、あの本が好き。』(立東舎)刊行記念イベントです。この本には石井さんも僕も参加しています。
http://rittorsha.jp/items/15317410.html
石井千湖さんはとにかくよく本を読んでいて、しゃべっていてどんどんアイディアが出てくるのが魅力です。長いことプロとして書評やインタビューの仕事を続けてきた蓄積が、大きな実力となっているのでしょう。
そうした石井さんとイベントができるということで楽しみです。御興味があれば、いらしていただけるとありがたいです。

2016年2月24日水曜日

3月13日に江南亜美子さんと対談します

3月13日の午後3時から、京都amuで書評家の江南亜美子さんと対談します。
http://amu-kyoto.tumblr.com/post/138139522412/sekaibungaku
タイトルは「都甲幸治さんに聞く「世界文学」入門 ~書評家・江南亜美子による公開インタビュー」で、江南さん他と作った読書ガイド『きっとあなたは、あの本が好き。』や最近気になっている海外文学など、いろいろとお話をする予定です。
江南さんは本当にしゃべりが面白いし、いろいろなことをよく知っています。いつもストイックに文学に打ち込んでいる姿が素晴らしい。どんなお話が聞けるのか楽しみです。

2016年2月23日火曜日

3月5日にジョン・フリーマンさんと対談をします

2016年3月5日の19時から、雑誌『グランタ』の元編集長で、あらたに雑誌『フリーマンズ』(年2回刊行)を立ち上げたジョン・フリーマンさんと対談をします。
https://www.kinokuniya.co.jp/c/label/20160217175500.html
通訳兼対談相手としてもう一人、作家・翻訳家の辛島デイヴィッドさんにも参加してもらうので、実質的には鼎談になるのかな。
さっそく『フリーマンズ』を入手しましたが、村上春樹やアレクサンダル・ヘモン、リディア・デイヴィスなど、英語圏での文学の動きがよく分かる楽しい雑誌になっています。
https://www.facebook.com/Freemansmag/
他には、作家の村田沙耶香さんや文芸評論家の市川真人さんが『グランタ』についてお話ししてくださるようです。


2016年2月21日日曜日

筒井康隆『モナドの領域』書評しました

2016年2月21日の日本経済新聞書評欄で筒井康隆『モナドの領域』(新潮社)の書評をしました。
http://style.nikkei.com/article/DGXKZO97516570Q6A220C1MY6001?channel=DF130120166021
河原で遺体が見つかったバラパラ殺人の顛末に、GODと名乗る老人の出現と、筒井の最新作は息つく暇もありません。僕は電車の中で読んでいてまんまと駅を乗り過ごしてしまいました。それにしても、ライプニッツ、アクィナスと、どれだけ広く学んでいるんでしょうか。80歳をすぎた作家がこんなにも生命力にあふれた作品を書ける、ということで自体に希望を感じます。筒井さん、どうもありがとうございます。

2月26日に藤野可織さんと対談をします

2月26日の夜7時から、渋谷のHMV&BOOKSで作家の藤野可織さんと対談をします。
http://www.hmv.co.jp/en/st/event/23282
『きっとあなたは、あの本が好き。』発売記念イベントで、東京国際文芸フェスティバルの一部にもなっています。
藤野さんは小説もおもしろいですが、しゃべりもすごくおもしろいです。『きっとあなたは、あの本が好き。』では朝吹真理子さんと僕との鼎談で、谷崎潤一郎などについて話してくださいました。
今回の対談ではいろんなお話が聞けそうで楽しみです。

2016年2月19日金曜日

『きっとあなたは、あの本が好き。』(立東舎)出しました

1月末にですが、『きっとあなたは、あの本が好き。』(立東舎)という名前のブックガイドを出しました。
http://rittorsha.jp/items/15317410.html
作家、翻訳家、書評家の10人が集まって8本鼎談をし、好きな本の好きなところをひたすらしゃべる、という企画です。僕はホストとして、8本すべてに参加しています。楽しい雑談に加わっている気持ちで読んでいただければ嬉しいです。
このサイトには僕のインタビューも載っています。
http://rittorsha.jp/interview20160216-1.html
参加メンバーは以下のとおりです。

朝吹真理子さん
阿部賢一さん
石井千湖さん
江南亜美子さん
岡和田晃さん
武田将明さん
藤井光さん
藤野可織さん
和田忠彦さん

目次はこんな感じです。

1 村上春樹が気になる人に-現代日本からアジア、アメリカへ(都甲幸治×武田将明×藤井光)
2 ルイス・キャロルが気になる人に-あえて男だらけでアリスを読む(都甲幸治×武田将明×藤井光)
3 大島弓子が気になる人に-文化系女子の流れ(都甲幸治×藤野可織×朝吹真理子)
4 谷崎潤一郎が気になる人に-禁断の愛いろいろ(都甲幸治×藤野可織×朝吹真理子)
5 コナン・ドイルが気になる人に-小説のなかにあるたくさんの「謎」(都甲幸治×和田忠彦×石井千湖)
6 J.R.R.トールキンが気になる人に-ファンタジー初めの一歩(都甲幸治×阿部賢一×岡和田晃)
7 伊坂幸太郎が気になる人に-映画化されたベストセラー(都甲幸治×阿部賢一×江南亜美子)
8 太宰治が気になる人に-ダメ人間の生態(都甲幸治×阿部賢一×江南亜美子)

本当にみなさんおもしろい人ばかりでした。普段読まない本も読めて、僕はとても勉強になりました。みなさんどうもありがとうございました。

2016年1月30日土曜日

『本の雑誌』2月号新刊めったくたガイド書きました

『本の雑誌』2016年2月号新刊めったくたガイド書きました。
http://www.webdoku.jp/
取り上げた作品は以下の三冊です。

J.M.G.ル・クレジオ『嵐』(中地義和訳、作品社)
李承雨『香港パク』(金順姫訳、講談社)
セサル・アイラ『文学会議』(柳原孝敦訳、新潮社)

ル・クレジオの作品は韓国の離島が舞台で、アフリカ系アメリカ人と韓国人の混血である少女と過去を持つ男性の淡い恋の物語になっています。これが翻訳も文章もとても素晴らしい。まさにノーベル文学賞にふさわしい小説です。
李承雨の『香港パク』は奇妙な味の小説ですね。でもよく読むと、軍の影響が強い韓国社会の暗さがよく伝わってきます。韓国にはいい作家がたくさんいますね。
セサル・アイラ『文学会議』はとても面白いです。軽いタッチで不条理な話が続いていきます。僕の好きなビオイ・カサーレスにちょっと似ているかな。中南米にはこんな作家もいるんですね。

2016年1月29日金曜日

町田康さんと対談をしました

雑誌『公研』2016年1月号で町田康さんと対談をしました。
http://www.koken-seminar.jp/new.htm
あまり書店では見かけないですが、橋爪大三郎さんや山極壽一さんなんかも書いている硬派な雑誌のようです。
対談のタイトルは「いまのアメリカ文学から見るアメリカのいま」という、ちょっと回文のようなものでで、ジュノ・ディアス『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』からベンジャミン・フランクリン、果ては『宇治拾遺物語』や『古今和歌集』まで、すごく多岐にわたる話をしました。
一貫して印象的だったのは、町田さんの素直で謙虚で繊細なお人柄です。しかもこれほどの知性を持った方が世の中にはたして何人いるものだろうか、と話していて思ってしまいました。
かっこいい大人とはこういう人のことを言うのでしょう。
以前から町田さんの作品の大ファンだったのですが、こうした対談が実現して、本当に嬉しいです。町田さん、そして関係者のみなさん、深く感謝しております。

2016年1月25日月曜日

ノーベル文学賞受賞者の予想をしました

Figaro Japon2016年3月号で、今年度のノーベル文学賞受賞者の予想をしました。
http://madamefigaro.jp/magazine/figaro/201603.html
もちろん村上春樹は相変わらずの上位ですが、他にも世界にはこんな作家がいる、というエッセイを書きました。言及したのは以下の5人です。

グギ・ワ・ジオンゴ(ケニア)
ジョイス・キャロル・オーツ(アメリカ合衆国)
イスマイル・カダレ(アルバニア)
高銀(韓国)
セサル・アイラ(アルゼンチン)

2016年1月9日土曜日

『フィガロ・ジャポン』でジュライとミンギュの書評をしました

『フィガロ・ジャポン』2016年2月号でミランダ・ジュライ『あなたを選んでくれるもの』(新潮社)とパク・ミンギュ『亡き王女のためのパヴァーヌ』(クオン)の書評をしました。
http://madamefigaro.jp/magazine/figaro/201602.html
「2015年に感動した本」というコーナーで、僕は2冊選びました。
他に挙げられているのは、カズオ・イシグロ『忘れられた巨人』(早川書房)、川上未映子『あこがれ』(新潮社)、イーユン・リー『独りでいるより優しくて』(河出書房新社)です。

2016年1月7日木曜日

『エル・ジャポン』で青春小説5冊を選びました

『エル・ジャポン』2016年2月号で青春小説を5冊を選びました。
http://www.elle.co.jp/magazine/magazine_elle/20151226
選んだのは以下のとおりです。

太宰治『人間失格』 (新潮文庫ほか)
よしもとばなな『キッチン』(角川文庫)
村上春樹『中国行きのスロウ・ボート』(中公文庫)
朝吹真理子『きことわ』(新潮文庫)
ジャン・コクトー『恐るべき子供たち』(光文社古典新訳文庫)

どれも切なくて痛い、大好きな作品ばかりです。

2016年1月6日水曜日

いしいしんじさんと『すばる』で対談しました

『すばる』2016年2月号でいしいしんじさんと新刊『よはひ』を巡って対談しました。
http://subaru.shueisha.co.jp/
『よはひ』は様々な文体や内容の短篇が集まって長篇になっているという作品です。時空が飛び交いながら、結局は語り手が息子ひとひ君に語りかけているという構成になっているのも読みどころですね。こうした優れた作品について作者の方と直接お話しできて、とても幸せでした。

2016年1月5日火曜日

『本の雑誌』1月号新刊めったくたガイド書きました

『本の雑誌』2016年1月号の新刊めったくたをガイド書きました。
http://www.webdoku.jp/
扱った本は以下のとおりです。

ミシェル・ウェルベック『服従』大塚桃訳、河出書房新社。
キルメン・ウリベ『ムシェ 小さな英雄の物語』金子奈美訳、白水社。
作者未詳『虫めづる姫君 堤中納言物語』蜂飼耳訳、光文社古典新訳文庫。

ウェルベックの『服従』は時事的な絡みもあり話題になっていますが、読んでみればちゃんとした文学作品になっています。現代社会において年老い、疲れ、しかも信仰の助けも得られない現代人がどうやって心の平安を得たらいいのか、という問いかけは普遍的なものなのではないでしょうか。人間の弱さに焦点を当てた鋭い作品です。
ウリベの『ムシェ』には驚きました。バスク語で、こんな現代文学が書かれているんですね。しかもたくさんの言語に訳されてもいます。英語で書かなければグローバルにはなれない、という言説が嘘であることがはっきりとわかります。人間の気持ちをしっかりと書ければ、そして独特の経験をつかまえることができれば、どんな言語でも対等な力を持ち得るんです。たった60万人しか話者がいない言葉をあえて使うウリベが素晴らしい。
『虫めづる姫君』はとてもいいですね。古代のあえかで美しい人々の心情が伝わってきます。しかも蜂飼耳さんの訳文がとてもいいですね。なんとなく感情的な繋がりを感じることのできる外国、としての古典時代にも興味が出てきました。

2016年1月4日月曜日

『ユリイカ』坂口恭平特集に評論「閉じた家、開いた家」を書きました

 『ユリイカ』2016年1月の臨時増刊号『坂口恭平』に評論「閉じた家、開いた家」を書きました。
http://www.seidosha.co.jp/index.php?9784791703005
坂口恭平は『0円ハウス』や独立国家創設など様々な活動で知られています。しかしながら、彼の小説作品は比較的読まれることが少ないのではないでしょうか。
今回は『隅田川のエジソン』『幻年時代』『徘徊タクシー』『家族の哲学』の四冊を主に読み解きながら、彼が小説という形式を通して何をしているのかを読み解いていきます。
坂口の作品における、批判するのでも教育するのでもなく、ただ共にいて聞き流す、という境地は、人がともに生きるための強力な知恵と言えるのではないか、といったことを考えてみました。