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2014年4月23日水曜日

筒井康隆『巨船ベラス・レトラス』 (文春文庫)

小説論から著作権侵害事件まで様々な要素が突っ込まれた小説。いわゆる実験的といわれる手法なのだろうが、それらがことごとく面白さに貢献していることには脱帽するしかない。この作品を読んで、小説は自由なんだな、ということを体感した。こんな書き手はめったにいない。
薄っぺらな倫理が蔓延し、「文学が否定される世の中」への嫌悪に共感した。80歳近くでなお危険な香りを放つ筒井の存在は現代日本文学における宝である。