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2014年4月13日日曜日

筒井康隆『乱調文学大事典』(講談社文庫)

何といっても付録「あなたも流行作家になれる」がいい。いい批評でも悪い批評でも読者への効果は同じで、できるだけ取りあげられる方がいい。言及が多ければ人気があると読者は思うものだから。もちろん批評家は年上のことが多いので、真に新しいものは理解できない。したがって新しい人は必ず叩かれる。だから悪評が多いうちは安心だ。批評家に褒められたところはもうやめて、けなされたところを追求するべき。そうすればますます批評家に叩かれて、読者からの人気も出る一方だ、なんて議論は説得力がある。その後に筒井康隆がなし遂げてきたことを見れば、彼の考えが正しいことはよく分かる。
だが、ある程度年齢がいき成功を収めて、誰もが褒めそやすようになったらどうすればいいのだろう。筒井の論に従えば、書き手は大きな危機を迎えるのではないだろうか。 おそらく、古典と年下から学び続けるということなのだろうが、むしろそこからのほうが容易ではないだろう。筒井の正直さと親切さがよく分かる本。