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2014年3月31日月曜日

ゴマブッ子『女のしくじり』(ヴィレッジブックス)

自分らしく生きるというのは絶対的にいいことだ。ゴマブッ子はそういう信念を破壊する。単に自分らしいだけでは、誰にも理解されず、その魅力を受け入れられることはない、と論じるのだ。これは自分らしさ教徒にとっては衝撃の意見なのではないか。だって人に合わせると自分がなくなるじゃないか、と。でも、自分らしさ100%と自分らしさ0%の二択しかないのかな。
「合コンに上下赤いジャージで来た男がいたらどう思う?
間違いなく、そんな男は論外よね? 連れて歩くのも恥ずかしいわよね? そのジャージの素材がいいとかブランドがどうとか、淡々と語られたところでジャージはジャージ。しったこっちゃないわよね?
でも? ジャージの男も、貴女のオシャレなファッションも「その価値が自分にしかわかっていない」という点では同じだと思わない?」(202)
自分らしさを相手がわかる形に翻訳すること。そして世界の喜びを増やすこと。自分らしさなんてそれだけでは独り言でしかない。そのままでは、自分らしさを発揮する場所すら与えられない時点で、結局は0%でしかないのだ。
自分には理解できない他人との相互交流を通して、徐々に受け入れられる自分らしさを増やしていくこと。自分らしさ教徒に社会の存在を教える点でゴマブッ子の著作は優れている。