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2014年3月25日火曜日

矢尾こと葉『頭の休ませ方』(中径の文庫)

最近「養生」という言葉が気になっている。傲慢な頭は体を無視して勝手にグングン考え続けるが、実際には体の一部でしかないので、やっぱり疲労し、勝手にネガティヴになり、やがては行き詰まってしまう。それでもうまくいかないのは考えが足りないからうまくいかないのかと判断して、不毛なループ状態に入る。
そんなときは考えを断ち切ることが必要だ。頭に空白を作ると、外部から五感を通じていろいろなものが入ってくる。体内の感覚が何かを伝えてくる。そこでようやく、きちんとひたむきに考えることで現実を見失っていたことに気づく。
この本にはさまざまな思考の断ち切り方が収録されている。気持ちいいことをしていいんだ、自分の体が喜ぶことをしていいんだ。その気づきはそのまま、自分が身体を持ち、体力も寿命も限界がある存在だということを受け入れることにつながるだろう。
限界内でよく生きること。だから養生なのだ。そして養生とは、無限の成長を指向する資本主義に対抗する思想になり得る。古くさい世界へようこそ。