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2014年3月16日日曜日

坂口恭平『モバイルハウス、三万円で家をつくる』 (集英社新書)

いやあ、面白いね。坂口の体が動くと風景が違って見えてくる。たった3万円で家を作ると決意して多摩川の河川敷に行けば、ロビンソンさんという名の長老が現れて、凄まじい智恵を伝授してくれる。動いて、出会って、教わって、作って、考える。フィールドワークものになると坂口恭平は無敵だ。
ロビンソンさんの「なんでも簡単に買うのではなく、自分でつくったら〇円で手に入るし、好きなようにできるから楽しいでしょ」 というのは至言である。自分で作り、余ったものはどんどん人にあげてしまう。人間関係こそが財産。
ここにはレヴィ=ストロースのブリコラージュも、マルセル・モースの『贈与論』もある。「人が欲しがらないものを欲しがることこそが、寄生しない自由な生活を実現させる。」(116)なんて、まるで今西錦司の棲み分け理論ではないか。坂口の本を読むと心の風通しがよくなる。