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2014年2月9日日曜日

菅原裕子『コーチングの技術』(講談社現代新書)

最近、教えることについて悩んでいた。親切に教えれば教えるほど、むしろ相手の考える力や生きる力を奪っているのではないか、という疑問にさいなまれていたのだ。この本は明瞭にこの疑問に答えてくれた。
ヘルプとサポートの二つの概念について菅原は語っている。ヘルプは、飢えている人に魚を釣って与えてあげるようなこと。社会的には褒められるし、相手にも感謝されるが、結局永遠に相手は一人では生きられるようにならない。 死なないでいる人を作るだけの手法だ。しかも相手を自分に依存させてしまう。反対にサポートは、魚の釣り方を教えてあげるようなことだ。魚を釣って生きるという相手の潜在能力が発揮されるように仕向け、最短で自分から相手を独立させる。依存関係も発生しない。
これは目から鱗だった。僕は自尊感情が欲しくて、今まで相手を自分に依存させていたのかもしれない。じゃあどう変わればいいんだろうか。
菅原は言う。ティーチングからコーチングへの変換を遂げればいいのだと。ティーチングとは、能力がなく知識がない相手に上から授けること。これには限界がある。コーチングは、潜在能力があり、十分に知識を持っている相手に、それを発揮できるような支援をすること。重要なのは、ティーチングもコーチングも相手そのものは同じだということである。ただこちらの見方が違うだけなのだ。
確かに、働きかけられる方の立場から考えれば、自分を尊敬してくれない相手に何かをやらされるくらい嫌なことはないよね。コーチングについてもっと学びたくなった。名著。