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2014年2月24日月曜日

ジョナサン・カラー『新版ディコンストラクション』(富山太佳夫・折島正司訳、岩波現代文庫)

困ったときのジョナサン・カラー頼みということ言葉があって、というかないのだが、ディコンストラクションだろうがなんだろうが、この人の手にかかるとなんでもよくわかる。この本もそうで、難しい概念や論述の流れが、実にわかりやすく解説されている。たとえばこの本を読んでからポール・ド・マンの『読むことのアレゴリー』なんて読むと、まあよく分かって嬉しくなる。
おそらく普段のカラーもすごくいい先生なんだろうな、と思う。教師として必要なのは大胆な単純化と、難しそうな本もとにかく読んでみようという勇気を学生に与えることの二つで、カラーはどの本でもその両方を見事になし遂げている。
僕は30歳くらいになってからようやく大学院でちゃんと教育を受けたので、自分より10歳ほど下の人たちと気分を共有してきた。そしてその結果として、上の世代の政治理論嫌いにも、下の世代のディコンストラクション嫌いにもなじめない。理論の初心を知れば、デリダだってサイードだってものすごくちゃんとしている。
そこらへんのコミュニケーションギャップを埋めてくれるのがカラーだ。だから信頼できる。