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2014年2月23日日曜日

ポール・ボウルズ『優雅な獲物』(四方田犬彦訳、新潮社)

ボウルズはすごい。あまりにも残酷すぎて笑ってしまう。すぐに人が殺される。慰み物として売られてしまう。作品が近代文学の外側に易々と出て行く。いや、これは文学なのかもわからない。人類学なのか、神話なのか、妄想なのか。とにかく、アメリカ現代文学の枠組みでは全くわからないのは確かだ。
『優雅な獲物』も、モロッコの人々が主に登場する。翻訳の文章が素晴らしい。物語の展開の速さと強度に圧倒される。実にいい本だ。もちろん版元品切れである。あーあ。
20年前はあんなにボウルズをみんな読んでいたのに、どうして今は『モロッコ幻想物語』しか買えないのか。しかも収録されているのはボウルズの主要作品ですらない。みんなすぐに物事を忘れすぎだよ。